オッペンハイマー
クリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」は、「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた物語だ。オッペンハイマーは中性子星やブラックホールの研究でも知られているが、何といってもアメリカの原爆開発計画「マンハッタン計画」のリーダーを務めたことで有名だ。ナチス・ドイツに対抗してニューメキシコ州ロスアラモスで始まった計画は、ニールス・ボーアやエンリコ・フェルミ、ジョン・フォン・ノイマン、ハンス・ベーテ、リチャード・ファインマンといった一流の科学者・技術者を総動員して、1945年7月のトリニティ実験を経て、広島に投下したリトルボーイ、長崎に投下したファットマンという2つの原爆を製造した。オッペンハイマーはそのリーダーだったが、戦後はエドワード・テラーが推進した水爆開発に反対、共産党との関係もあり、公職追放という憂き目にあった。本作では「バットマン」シリーズで猟奇的な演技を見せたキリアン・マーフィーが主役を演じ、オッペンハイマーの複雑な性格を見事に表現している。マンハッタン計画の話はファインマンも後に自伝で語っているが、そのファインマンもときどき、ボンゴをたたく姿で登場する。とにかく明るい性格でオッペンハイマーとは対照的なファインマンだが、オッペンハイマーの元恋人ジーン・タトロックが自殺したのとほぼ同じ時期に、ファインマンも妻アーリーンを結核で亡くしていたんだな。晩年のアルベルト・アインシュタインが登場するほか、マット・デイモンやロバート・ダウニー・Jr.、ケネス・ブラナー、ゲイリー・オールドマンなど俳優陣も豪華で、いろんな面で興味深い作品だ。

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