ジョーンの秘密
第2次世界大戦前から冷戦期にかけて、KGBに国家機密を流していたイギリスの女性公務員がいた。その女性、メリタ・ノーウッドは、1972年に引退していたが、1999年にスパイ行為が発覚、しかしながら起訴には至らず、2005年に死去した。ジュディ・デンチ主演の映画「ジョーンの秘密」は、そのメリタ・ノーウッド事件にインスパイアされた物語だ。2000年のある日、郊外の自宅で余生を過ごすジョーン・スタンリー(デンチ)のもとに、MI5がやってくる。つい最近死亡した元外務省幹部のW・ミッチェル卿が遺した資料の中に、ミッチェル卿とジョーンが共謀し、KGBに核開発に関する機密を流していたことを示す証拠があったというのだ。MI5の取り調べを受けながら、ジョーンは若かりし頃を回想する。時は1938年、ケンブリッジ大学で物理学を学ぶジョーン(ソフィー・クックソン)は、ユダヤ系ロシア人のソニアに誘われ共産主義者の会合に参加する。そこで出会ったのは、ソニアのいとこレオだった。そこからジョーンの運命の歯車が回り始める。ジョーンの行為は、特定の国家からみれば反逆ということになるんだろうが、国家にエゴがつきものであることを考えれば、一方的に非と決めつけるわけにはいかない。それに、科学技術とは特定の者だけではなく、人類全体が分かち合うべきものであり、悪用を防ぐためにこそ政治があるのだ。ジョーンの動機が広島・長崎への原爆投下だったということにも、とりわけ日本人は深く思いを致すべきだろう。

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