« 2015年9月 | トップページ | 2015年11月 »
21世紀末、新種のウィルスが蔓延、感染した人間は超人的な知能と運動能力を身につけるが、「ファージ」と呼ばれる彼らは、感染後わずか12年で命を落とす運命にあった。ファージの能力を恐れた人間たちは、彼らの根絶を企て、政府によるファージ掃討作戦が開始される。というわけで、近未来の人間対ファージの戦いを描くのがミラ・ジョヴォヴィッチ主演の映画「ウルトラヴァイオレット」だ。ジョヴォヴィッチ演じるファージのヴァイオレットは、夫と子どもを政府に殺され、ファージ最強の戦士となっていた。ヴァイオレットはファージの地下組織から指令を受けて政府の最終兵器を奪いに行くが、その最終兵器が少年であることを知り、政府とファージの地下組織の両方から追われる身となる。とにかくヴァイオレットは強く美しく、ジョヴォヴィッチのアクションシーン満載だ。
リュック・ベッソンが「レオン」の大ヒットを受けて制作した映画「フィフス・エレメント」は、ちょっとコメディがかった、宇宙人との戦いを描いたSF映画だ。1914年、エジプトのピラミッドに現れたモンドシャワン人なる宇宙人と、代々モンドシャワン人に仕える人間の司祭との間で、世界を救う5つの要素、すなわち、火・水・土・風を表す4つの石と、「フィフス・エレメント(第5の要素)」に関する会話が交わされる。モンドシャワン人は300年後に再び地球に現れると予告し、宇宙に去って行った。それから300年後の2214年、地球は絶滅の危機に瀕するが、退役軍人のタクシードライバー コーベン(ブルース・ウィリス)や謎の少女リールー(ミラ・ジョヴォヴィッチ)らの活躍により、世界は救われる。第5の要素とは、やはり「○○」だった。「○○は地球を救う」と言うもんね。「レオン」でエキセントリックなDEA悪徳捜査官を演じたゲイリー・オールドマンは、本作でも変てこな武器商人をやらされていて、ちょっと気の毒ではある。
われわれの銀河系には1000億の恒星があると考えられているが、人間の脳にあるニューロン(神経細胞)も同じくらいある。人間の脳は、宇宙に存在するものの中でも最も複雑なものだと言えるだろう。20世紀末から今世紀にかけて、脳研究やテクノロジーの進展により、心の仕組みと働きが劇的に解明されてきた。さらに科学の進歩が続くなら、われわれの能力や可能性は飛躍的に高まり、驚異の未来が開けるという。たとえば、心で考えるだけで物を動かしたり、感情や感覚をインターネットで送ったり、記憶や知能を強化することもできるようになるのだ。アメリカの物理学者ミチオ・カクは最近、著書「サイエンス・インポッシブル」や「2100年の宇宙ライフ」の中で「心」や「意識」に関する最先端の話題を取り上げているが、新著「フューチャー・オブ・マインド」では、これらの問題についてさらに深く掘り下げている。映画「マトリックス」では、ヘリコプターの操縦マニュアルを脳にダウンロードする場面があるが、動物実験ではすでに脳に記憶を挿入することができているというから驚きだ。500ページ近い分厚い本だが、読み始めると大変おもしろい。
スウェーデンの小説「ミレニアム」シリーズのスウェーデン版映画化作品第3作「眠れる女と狂卓の騎士」では、リスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)が、彼女を社会的に抹殺しようとする真の敵との決着をつけるため、法廷での戦いに臨む。元KGBのスパイであり、母の敵でもある父ザラチェンコとの対決で瀕死の重傷を負ったリスベットは、ミカエル・ブルムクヴィスト(ミカエル・ニクヴィスト)によって一命をとりとめた。背後関係を何も知らない警察はリスベットを逮捕しようとするが、これまた一命をとりとめたザラチェンコが病院内で射殺されるなど、謎の組織が関係者の口封じに動いていることが明らかになっていく。ザラチェンコはかつて、公安警察内の「班」と呼ばれる秘密組織に協力する代わりに、数々の悪事を黙認されていた。そして、母を虐待するザラチェンコに火を放ったリスベットを、「班」は精神異常者に仕立て上げ、社会的無能力者ということにしたのだ。リスベット裁判は形勢不利なまま進み、ミカエルらにも危険が迫るが、警察や公安警察の正義派の捜査官らの協力も得て、ミカエルらはついに「班」の正体を暴き、リスベットも無罪を勝ち取る。法廷でのリスベットの「勝負ヘア」がすごいが、過去との決別を果たしたリスベットの自然な笑顔も印象的だ。
国立天文台は24日(土)、「三鷹・星と宇宙の日2015」を開催する。国立天文台三鷹キャンパスはいつでも見学可能だが、この日は通常の見学コース以外の施設が公開されるほか、講演会や天体観望会もある。天気がよければ50㎝反射望遠鏡で月や星をのぞかせてもらえるので、午後から出かけて暗くなるまでいるといい。
イギリスの作家フレデリック・フォーサイスのスパイ小説「第四の核」は、マイケル・ケインとピアース・ブロスナン主演で映画化された。旧ソ連の高官が、イギリス国内の米軍基地で原爆を爆発させ、NATOとアメリカを分断することによって、自らが権力を握ろうという陰謀を企むのだが、ブロスナンはその工作員ペトロフスキー役だ。後に5代目007ジェームズ・ボンドとなるブロスナンだが、本作では冷酷非情な工作員を不気味に演じている。これを防ぐイギリス諜報部員プレストンはケインが演じているが、もう中年体型なのにけっこう激しく動いている。他にも、バットマンでケインの前にアルフレッドを演じたマイケル・ガフが出ていたりして、なかなかおもしろかった。
スウェーデンの小説「ミレニアム」シリーズのスウェーデン版映画化作品第2作「火と戯れる女」では、いよいよリスベット・サランデル(ノオミ・ラパス)自身の秘密が解き明かされることになる。ハリエット・ヴァンゲル失踪事件の謎を解いてから1年、雑誌「ミレニアム」に戻ったミカエル・ブルムクヴィスト(ミカエル・ニクヴィスト)は、リスベットと連絡が取れずにいたが、少女人身売買組織を追うジャーナリストをミレニアムに迎え入れ、調査を開始する。しかし、調査を開始するや、そのジャーナリストは殺されてしまう。一方、リスベットの後見人であるビュルマン弁護士も死体で見つかるが、どちらの現場にもリスベットの指紋が残されていた。警察は容疑者としてリスベットを追うが、ミカエルは独自の調査でリスベットに迫る陰謀とその黒幕を明らかにするのだった。宿敵との対決で瀕死の重傷を負ったリスベットには、最終決着をつけるべく、法廷での対決が待っている。
10世紀中頃、坂東(今の関東)で起きた平将門の乱の経緯は、「将門記(しょうもんき)」という書物によって知ることができる。残念ながら原本は失われ、2つの写本が残るだけ、しかもいずれも冒頭部分が欠落しているが、1000年くらい前の書物が残っているというのはとても貴重だ。将門研究で知られる村上春樹(作家の村上春樹とは別人)が書いた「物語の舞台を歩く 将門記」は、将門記の記述に沿って、舞台となった場所を歩くという趣向だ。1000年以上前のできごとなので、今となっては正確にはわからない場所ばかりだし、干拓などで地形も変わってしまったが、実際に将門が活躍した地域を歩き、将門の時代に思いを馳せるのもいい。将門の本拠地は、今年9月の豪雨で堤防が決壊した鬼怒川の近くにあったが、21世紀になった今でもあのような災害が起きるのだから、将門の時代はもっと大変だったろう。
10世紀中頃の平安時代、坂東(今の関東)で起きた平将門の乱(承平天慶の乱)は、それまでの貴族同士の争乱とは一線を画すできごとだった。将門の乱の二百年後、平清盛が政権を握り、さらにその四半世紀後に鎌倉幕府が開幕するが、鎌倉幕府や江戸幕府は将門に対して強い親近感を抱いていたそうだ。北山茂夫が書いた「平将門」は、将門の乱を通じて、地方において武夫(つわもの)という新しい社会層がいかに誕生したかという問題に焦点を当て、中央政府に対して将門ら武夫たちが謀反したことを、鎌倉政権樹立の露払いだったと言えなくもない、と述べている。ちなみに、将門を討った従兄弟 貞盛の子孫から清盛が出ているが、平家を滅ぼした源頼朝を支えた御家人の多くは平氏一族だ。中でも北条氏は清盛同様貞盛の子孫で、源平合戦とは実は貴族政権に取り込まれた中央の平氏と武家政権をめざす地方の平氏との戦いであったと言えるのではないか。
スウェーデンの小説「ミレニアム」シリーズのスウェーデン版映画化作品第1作「ドラゴン・タトゥーの女」は、6代目007ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグ主演でアメリカでもリメイクされたが、いずれ劣らぬおもしろさだ。ストーリーはだいたい同じで、主役のミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルは、スウェーデンの有名俳優ミカエル・ニクヴィストとノオミ・ラパスがそれぞれ演じている。原作は3部作で、スウェーデンではすべて映画化されているが、ハリウッド版はまだ第1作目しか映画化されていない。著者のスティーグ・ラーソンはもともとジャーナリストだったが、その後ミレニアムシリーズの執筆を開始、第1作が刊行される前に死去してしまった。本作はミカエルとリスベットがスウェーデンの財閥ヴァンゲル家にまつわる謎を解くという話だが、第2作「火と戯れる女」からはいよいよリスベット自身の過酷な生い立ちが語られることになる。
MI6の有名エージェントといえば007ことジェームズ・ボンドだが、CIAの有名エージェントというと、ジャック・ライアンが挙げられる。そのライアンが初めて登場する映画「レッド・オクトーバーを追え!」では、初代ボンド役のショーン・コネリーが旧ソ連の最新鋭原子力潜水艦「レッド・オクトーバー」艦長マルコ・ラミウスを演じている。レッド・オクトーバーはスクリューではなく、キャタピラー・ドライブという推進システムを備えていて、ソナーでも探知できない。ラミウスはこれを利用し、従来から考えていたアメリカへの亡命を図る。しかし、アメリカ側には一切コンタクトしていないので、問題はアメリカ側にその意図を察知してくれる者がいるかどうかだ。ヘタをするとアメリカとソ連の両国から攻撃を受けるおそれもある。CIA情報分析官ライアン(アレック・ボールドウィン)は、ラミウスの性格やソ連の不審な動きから、ラミウスが亡命を希望しているのではないかと推測、政府から撃沈命令が出ている中、深海でラミウスとのコンタクトを果たすのだった。コネリー演じるラミウス艦長の冷静沈着ぶりに加え、CIA高官を演じるダース・ヴェイダーの声優ジェームズ・アール・ジョーンズのバリトンの美声など、なかなか見どころの多い映画だ。
天才的な精神科医であり殺害した人間の臓器を食べる猟奇的犯罪者ハンニバル・レクターシリーズ第4作目「ハンニバル・ライジング」は、リトアニアの貴族の御曹司ハンニバル・レクターがいかにして「人食いハンニバル」になったかを描く作品だ。物語はレクター(ギャスパー・ウリエル)の少年時代、一家が戦争に巻き込まれるところから始まる。父と母を目の前で殺され、幼い妹ミーシャと二人きりになったレクターは、戦場で略奪を繰り返すならず者たちに捕らえられる。このとき、レクターの人格形成に決定的なできごとが起きる。食料が尽きたならず者たちは、ミーシャを殺害して食べてしまうのだ。この過酷な状況を何とか生き延びたレクターは、死んだ叔父の未亡人レディ・ムラサキ(コン・リー)とともに生活するが、ミーシャを殺したならず者の一人の居場所を突き止め、復讐を開始するのだった。前作までが中年体型のアンソニー・ホプキンスだったのが、急に若くてハンサムなウリエルになったので、ちょっと違和感もあるが、レクターの猟奇性がなかなかよく出ている。復讐を遂げたレクターはこの後ひそかにアメリカに渡るようだが、レディ・ムラサキはどうなったのだろうか。
天才的な精神科医であり殺害した人間の臓器を食べる猟奇的犯罪者ハンニバル・レクターシリーズ第3作目「レッド・ドラゴン」は、時系列でいうと第1作目「羊たちの沈黙」の直前の物語だ。FBIの捜査官ウィル・グレアム(エドワード・ノートン)は犯罪捜査のためレクター(アンソニー・ホプキンス)にアドバイスを求めるが、レクターこそが真犯人であることに気づく。しかし、その瞬間グレアムはレクターに襲われ、瀕死の重傷を負うが、何とか反撃に出てレクター逮捕に成功する。この一件に懲りて引退したグレアムだったが、新たに発生した連続一家殺人事件の捜査に行き詰まったFBIに引っ張り出され、再びレクターにアドバイスを求めるのだった。せっかく引退して平和な生活を手に入れたのに、またまた危険な生活に戻ってしまうとは、グレアムもしょせん普通の人間ではないということだろう。犯人のダラハイド役を演じるのはレイフ・ファインズで、最近では007シリーズのM役を演じているが、本作ではハリー・ポッターシリーズのヴォルデモート卿のような不気味さだ。あと、ダラハイドに殺される不良新聞記者をフィリップ・シーモア・ホフマンが演じていて、はまり役の演技ぶりを見せてくれる。
人工衛星の軌道上での修理ミッション中にアクシデントが発生し、幾多のトラブルを乗り越えながら地球に生還するというストーリーの映画は、最近では「ゼロ・グラビティ」がなかなかのできだったが、2000年にはクリント・イーストウッドも「スペース・カウボーイ」を制作している。旧ソ連の通信衛星「アイコン」が故障したのだが、修理できるのは設計者であるフランク・コーヴィン(イーストウッド)しかいないということで、とっくに引退したコーヴィンらチーム・ダイダロスの4人がスペースシャトルに搭乗して修理に向かう。しかし、どうも最初からNASAは何かを隠しているようだ。その疑惑は、通信衛星「アイコン」の内部を見てついに判明する。「アイコン」は旧ソ連時代、アメリカを狙った6発の核ミサイルを搭載した軍事衛星だったのだ。「アイコン」は制御不能になり、あわや地球に落下の危機を迎えるが、ガンで余命幾ばくもないことが判明しながらミッションに参加したホーク・ホーキンズ(トミー・リー・ジョーンズ)が、ミサイルを道連れに月に飛んでいった。さすが「宇宙人ジョーンズ」だ。チーム・ダイダロスには「大脱走」の「調達屋ヘンドリー」を演じたジェームズ・ガーナーも参加していて、何とも懐かしい。
ドイツの物理学者マックス・ボルンは、20世紀前半に波動関数の確率解釈を唱えるなど、量子力学の確立に貢献したが、オリビア・ニュートン=ジョンの祖父としても知られている。波動関数の確率解釈とはなんのこっちゃ?と思うだろうが、ぼくも大学で初めて量子力学を勉強したときは、???という感じだった。かのリチャード・ファインマンは、量子力学を本当に理解している者はいないと言ってるが、人間の脳の働き方では、今の量子力学の定式化は理解できないようになっているのかもしれない。もちろん、量子力学を使うことに関しては人類は大きな成功を収めたわけで、こうやってブログを書けるのも量子力学のおかげだ。相対性理論を完成させたアルベルト・アインシュタインは、量子力学には懐疑的で、「神はサイコロを振らない」という有名な言葉を残したが、これはボルンあての手紙で書いたものだ。「アインシュタインの相対性理論」は、アインシュタインとの親交が厚かったボルンが書いた本で、相対性理論だけでなく、相対性理論を理解するために必要な物理学の基礎もていねいに解説している。
この宇宙には星など通常の物質よりはるかに多い謎の物質が存在しているのではないかという疑問は、20世紀前半には呈示されていた。銀河団の運動や銀河系の中の恒星の運動を観測すると、目に見える通常の物質だけでは説明がつかないような観測結果が得られたのだ。スイスの天文学者フリッツ・ツヴィッキーは、目に見えないが重力は及ぼす謎の物質をダークマターと名付け、以来多くの科学者がその正体を追ってきた。最近の研究では、宇宙を構成するのは通常の物質5%、ダークマター26%、そしてこれまた謎のダークエネルギー69%であるということがわかってきた。アメリカの女性物理学者キャサリン・フリースが書いた「宇宙を創るダークマター」は、ダークマター探しの第一人者であるフリースが、宇宙論の最前線を語る本だ。フリースは学生時代、2年近く東京に滞在し、バーテンダーもしたそうだ。そうした経験からか、本書の原題は「THE COSMIC COCKTAIL」となっていて、冒頭にはそのレシピも紹介されている。しかも、マドラーでかき混ぜずにシェイクするということだから、まさにボンド流「Shaken, not stirred」だ。
映画「羊たちの沈黙」の続編「ハンニバル」は、天才的な精神科医であり殺害した人間の臓器を食べる猟奇的犯罪者ハンニバル・レクターシリーズ第2作目だ。前作で警察官を殺して脱走したレクター(アンソニー・ホプキンス)は、密かにアメリカを出国してイタリアに潜伏していた。かつてレクターの手にかかり唯一生き残った大富豪メイスン・ヴァージャー(ゲイリー・オールドマン)は、レクターへの復讐を果たすため、FBI捜査官のクラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)を利用しようとする。レクター役のホプキンスに加え、ヴァージャー役のオールドマンの怪演ぶりがこれまたおどろおどろしい。本作ではレクターの猟奇性が一段とグレードアップし、やりたい放題だ。中年体型のホプキンスなのに、プロの連中をも鮮やかに片付ける。特に、最後の方のシーンはレクターの魅力?全開なので、食事前や食事中には見ないようおすすめする。
ニュートリノは他の物質とほとんど相互作用しない素粒子で、20世紀前半にその存在が予言された。他の物質とほとんど相互作用しないということは、何でも通り抜けてしまうということなので、観測は非常に難しい。そこで日本では岐阜県飛驒市神岡町の地下深くに「カミオカンデ」という装置をつくり、地球を通り抜けるニュートリノを何とかキャッチしようと実験を重ねてきた。そして、1987年、小柴昌俊らが超新星爆発に伴うニュートリノを見事キャッチすることに成功、ニュートリノ天文学という新しい分野が花開くことになった。2015年のノーベル物理学賞受賞が決定した梶田隆章は小柴昌俊〜故戸塚洋二直系のニュートリノ専門家で、それまで質量を持たないと考えられていたニュートリノが、わずかながら質量を持つことを意味する「ニュートリノ振動」という現象を発見した業績が評価された。戸塚もノーベル賞有力といわれていたが、残念ながらその前に死去したので、喜びもひとしおだろう。別冊日経サイエンス「ニュートリノで輝く宇宙」には、小柴・戸塚・梶田らによるニュートリノ天文学の最先端の研究成果が紹介されている。
天才的な精神科医であるハンニバル・レクターは、殺害した人間の臓器を食べる猟奇的犯罪者でもあった。1991年の映画「羊たちの沈黙」は、アンソニー・ホプキンスの怪演により一躍その存在を世に知らしめた。FBIの実習生クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)は、バッファロー・ビル事件と呼ばれる猟奇的犯罪捜査のため、収監中のレクターにアドバイスを求める。レクターはクラリスに興味を持ち、アドバイスの見返りとして彼女に過去のトラウマを語らせる。とにかく最初から最後まで、暗〜くおどろおどろしい展開が続く。クラリスは単身、バッファロー・ビルの自宅に踏み込み、暗闇の中、恐怖心に打ち勝って見事バッファロー・ビルを倒す。がしかし、レクターは捜査協力の見返りとして収監場所を移動する間、警察官を殺害して脱走してしまう。このあたりの脱走方法もレクターらしい猟奇的手法だ。とにかくホプキンスの怪演ぶりがすごい。
アルベルト・アインシュタインが特殊相対性理論を発表したのは1905年だが、最初の論文のタイトルは「動いている物体の電気力学」というものだった。この論文が書かれた当時、宇宙は「エーテル」という仮想的媒質に満たされていて、光(電磁波)はエーテルの中を波として伝わるものだと考えられていた。したがって宇宙にはエーテルという「絶対静止空間」があり、マイケルソン・モーリーの実験(1887年)のように、「絶対静止空間」に対する地球の速度を測定しようとする実験があれこれと行われた。しかし、どの実験でも地球の「絶対速度」は検出されず、宇宙のどんな座標系から見ても光速度は不変であると結論せざるをえなかった。アインシュタインは、こうした事実を踏まえ、時間と空間の概念を大きく変える新しい理論を導いたのだが、この論文をおさめ、解説を加えたのが日本の物理学者 内山龍雄の「アインシュタイン 相対性理論」だ。この本はちょっと数式が出てくるが、アインシュタイン自身が一般向けに書いた「特殊及び一般相対性理論について」とあわせて読むといいだろう。
コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズには、シャーロキアンやホームジアンと呼ばれる熱狂的なファンがいることで有名だ。彼らはドイルの原作を「正典」と呼び、さまざまな研究を行っている。中でもアメリカのシャーロキアン W・S・ベアリング=グールドは、時系列がバラバラな「正典」を再構成し、ホームズの生涯を伝記風にまとめた「シャーロック・ホームズ」という本まで書いている。この本でベアリング=グールドは、「正典」では語られていないホームズの秘密まで創作していて、生い立ちやモリアーティ教授との最初の出会い、果てはアイリーン・アドラーとの短い結婚生活で男子までもうけたことなど、びっくり仰天の秘話を語っている。
イギリスの作家ジョン・ル・カレによる小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」は、東西冷戦下のイギリスMI6(サーカス)を舞台とした傑作スパイ小説だ。サーカスのトップ コントロールは、サーカス内にモスクワセンター(KGB)の二重スパイ「もぐら」がいるのではないかと疑い、その正体を突き止めるためある作戦を遂行しようとする。しかし、その作戦は大失敗に終わり、コントロールは失脚、コントロールの片腕ジョージ・スマイリーもサーカスを追われる。しかし、やはり「もぐら」はいるのではないかと疑った政府上層部の指令で、引退したコントロールが捜査に引っ張り出され、地道な捜査の末ついに「もぐら」の正体を暴くのだった。タイトルはコントロールがサーカス幹部5人を意味する暗号からとられているが、実はコントロールはスマイリーさえ疑っていた。この世界、自分以外はすべて疑えということなんだろう。「もぐら」の正体は突き止めたが、スマイリーにはさらに、「もぐら」を操っていたモスクワセンターのカーラとの対決が待っている。「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」はイギリスでドラマ化されたほか、「裏切りのサーカス」として映画化もされた。ドラマでスマイリーを演じたのは、映画「スター・ウォーズ」でオビ=ワン・ケノービを演じたアレック・ギネスで、これはぜひ見てみたい。
H・G・ウェルズの古典的名作「宇宙戦争」を映画化した作品は、10年前にトム・クルーズ主演でスティーヴン・スピルバーグがリメイクしたものがあるが、オリジナルは1953年の映画「宇宙戦争」だ。スピルバーグ版より半世紀も前の作品なので、映像は比較のしようがないが、当時としては最先端だったんだろう。原作では火星人はトライポッドという3本足の戦闘機械に乗っているが、本作では、磁力で浮揚する空飛ぶ円盤に乗っている。火星人の科学技術は地球人よりかなり進んでいて、地球人の攻撃はまったく歯が立たない。まさに火星人のやりたい放題で、街はどんどん破壊されていく。しかし、ある日火星人はピタッと動きを止める。火星人は、火星にはない、地球の微生物によって死に絶えてしまったのだ。かくして地球は救われるというストーリーだ。1938年にオーソン・ウェルズによりラジオドラマ化されたときは、本当に火星人が来襲したと思い込んだ聴衆がパニックを起こしたという伝説まである。主演のジーン・バリーはアメリカの俳優で、ジェームズ・ボンド役の候補になったこともあるそうだ。