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日本列島が形成されたのは、46億年の地球の歴史から見れば、割と最近だ。海洋プレートが海溝で大陸プレートの下に沈み込むとき、海洋プレートの上の堆積物がはぎ取られ、陸側に積み重なっていくものを付加体というが、日本列島は主に付加体からできている。これが大陸から引き裂かれ、弧状列島となっていくのだが、今の姿になったのは1万年前とごく最近のことだ。しかし、日本列島の元になった付加体の中には、もちろんもっと古いパーツがある。中でも、岐阜県七宗町(ひちそうちょう)の飛騨川沿いの上麻生礫岩(れきがん)には、20億年前という日本最古の片麻岩(へんまがん)が含まれている。このように日本列島に刻まれた地球の歴史を物語る50の景観を選び、写真とともに紹介するのが「日本列島の20億年」だ。北海道からも、浦幌町にあるKーT(K/Pg)境界やアポイ岳の幌満かんらん岩体などが紹介されている。
図鑑は楽しい。自然科学の分野では特にそうだ。頭の中で具体的なイメージを描くのが得意な人なら文字だけの本でもいいのだろうが、ぼくはそういうのがあまり得意じゃないので、写真とか図表がないといまいちイメージがつかめない。イギリスの医師であり解剖学者(しかも美人)でもあるアリス・ロバーツ編著の「人類の進化 大図鑑」は、人類700万年の進化の過程をたくさんのすばらしい写真やイラストでたどる図鑑だ。もちろん、アウストラロピテクス・アファレンシスのルーシーやホモ・エルガスターのトゥルカナ・ボーイなど、人類学史上有名な化石も詳しく解説されている。700万年前に出現した最初の人類は、ゆっくりと進化していったが、20万年前にアフリカで現生人類(ホモ・サピエンス)が出現、5万年前くらいから世界中に広がっていく。人類がどのような経路で世界中に拡散していったかという問題も、DNAの研究によって明らかになったというから驚きだ。
電弱統一理論を発見した1人であり、チャームクォークの存在を予言したアメリカの物理学者シェルダン・グラショウが書いた「素粒子物理に未来はあるか」は、本国では「科学が描く大きな絵小さな絵」とともに1冊の本として刊行された。電弱統一理論完成後、物理学者の関心は電弱相互作用と強い力の統一に向かうが、これは大統一理論と呼ばれ、まだ未完成だ。その先には、重力を統一するというさらなる難題が控えている。これを説明しようというのが超弦(超ひも)理論だが、超弦理論が成功を収めるかどうかはまだ誰にもわからない。しかし、大部分の物理学者は、自然は根底では単純だという揺るぎない信念を抱いている。その信念が物理学者を統一理論の完成へと駆り立てているのだ。
自然界の4つの力、重力、電磁気力、強い力、弱い力は、宇宙の始まりにおいては同じものだったのではないかというのが現代物理学の究極理論とも呼ばれるものだ。究極理論の追究は、電磁気力と弱い力が統一された電弱統一理論から大きく発展していくが、その電弱統一理論を発見した1人がアメリカの物理学者シェルダン・グラショウだ。グラショウはまた、物質を形づくる基本粒子であるクォークの1つ、チャームクォークの存在も予言した。クォークは6種類あって、第1世代のアップクォークとダウンクォーク、第2世代のチャームクォークとストレンジクォーク、第3世代のトップクォークとボトムクォークという名前がついている。グラショウが書いた「科学が描く大きな絵小さな絵」は、グラショウ自身の一物理学者としてのあゆみを振り返りながら、遠い宇宙の果てから極微のクォークの世界まで、知的冒険の旅を案内してくれる本だ。
日系アメリカ人の物理学者ミチオ・カクは現在、NHK Eテレの「ニューヨーク白熱教室〜最先端物理学が語る驚異の未来〜」という番組に登場しているが、最新の科学を一般の人向けにわかりやすく語る科学者だ。カクの専門は超弦(超ひも)理論で、「パラレルワールド」では、現代宇宙論とその中の最もホットな理論「マルチバース(多宇宙)」について詳しく述べている。マルチバースというのは、宇宙の小さな一点が突然インフレーションを起こし、「ベビーユニバース(子宇宙)」が芽吹き、その宇宙からさらに別のベビーユニバースが芽吹くというプロセスが永遠に続くというものだ。カクは、もしこのような「パラレルワールド(並行宇宙)」が存在するなら、遠い未来、われわれの住む宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は「次元の救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるだろうと語っている。
ホンダCB1100は乗りやすいという評価が一般的だが、足つきをよくするためシートが薄く、お尻が痛くなるという大きな欠点がある。これはゲルザブというクッションをつけたら改善されたが、それでも長時間乗るとけっこう気になる。こうした欠点を認識してか、ホンダは往年の名車ドリームCB750FOURのシートを彷彿させるKスタイルシートをオプションで用意しているが、先日ついに導入に踏み切った。またがってみて最初に思ったのは、ライディングポジションの変化だ。ノーマルシートより40㎜も高いので、かなり大きな変化だ。当然足つきも悪くなる。まだなじんでないので、座り心地もよくない。特に角張っているところがちょっと痛い。しばらく乗ってなじまないと、このシートへの交換がよかったのかどうかわからないかもしれない。
ホンダCB1100に乗り換えてから4年が経過した。これまでの走行距離は約23000㎞で、かつては年間1万㎞以上は走っていたのが大幅に減った。職場の近くに引っ越してバイク通勤をやめたことが大きいが、以前乗っていたシルバーウイングのように、気軽に乗ろうという気持ちが起きないのも事実だ。最近では春秋の1泊ツーリングとGWの三陸経由北海道ツーリング、夏の北海道ツーリングの4回くらいしか乗っていない。先日、以前から気になっていたKスタイルシートを導入し、三崎へとプチツーリングに出かけた。三崎には産直センターも入った「うらり」があり、周辺には名物のマグロ料理店もたくさんある。途中、久里浜にはフェリー港があり、ここからは金谷行きの東京湾フェリーが出ている。このあたりは三浦半島と房総半島が最も近い地点で、東京湾を行き交う船舶や対岸の房総半島もよく見える。
チャイコフスキーの3大バレエ組曲といえば、「白鳥の湖」「眠りの森の美女」「くるみ割人形」だ。この中でも「白鳥の湖」の「情景」と「くるみ割り人形」の「花のワルツ」は超有名曲で、聞いたことがない人はまずいないだろう。いずれもとても美しい曲で、あの怖そうな顔したチャイコフスキーの作品とは思えないほどだ(失礼)。チャイコフスキーはずいぶん繊細な性格だったそうで、そうした性格がロマンチックな曲を生み出したのだろうか。
ベートーヴェンの交響曲第5番《運命》とドヴォルザークの交響曲第9番《新世界より》、そしてシューベルトの交響曲第7番(旧第8番)《未完成》は、3大交響曲とも呼ばれる超有名曲だ。そんな超有名曲の《未完成》だが、その名のとおり第4楽章まで完成しておらず、第2楽章までしかない。なぜシューベルトが途中で作曲をやめたかは謎で、なんとももったいない話だが、これだけ有名になったのだからいいのかもしれない。そういえば、《未完成》は映画「マイノリティ・リポート」でも使われているが、あれはプリコグを使った殺人予知システムが未完成だということを暗示していたのだろうか。
近未来、地球環境が劇的に変化し、人類が生存できなくなることがわかったとき、われわれはどのような道を選ぶのか。映画「インターステラー」は、滅亡の危機に瀕した人類が、居住可能な新たな惑星を探すため、宇宙の彼方への探査ミッションに挑む物語だ。主演のマシュー・マコノヒーはカール・セーガン原作の映画「コンタクト」にも出演しているが、本作も「コンタクト」も、ワームホールを利用して光速を超える旅を実現している。他にも、ブラックホールや事象の地平面、特異点、重力波、5次元時空など、現代物理学の最先端の概念が次々と登場するが、それもそのはず、本作にはアメリカの物理学者キップ・ソーンが深く関わっているのだ。科学考証はもちろん映像美もすばらしく、「2001年宇宙の旅」、「コンタクト」に並ぶ学術的SF映画と言っていいだろう。
宇宙には数多くの天体が存在するが、その中でも天文学者の注目を集める「スター天体」がある。冬の星座の代表といえばオリオン座であり、ここには天体写真家にも大人気のオリオン座大星雲M42があるが、M42では太陽よりもずっと重い恒星がいままさに誕生している。また、鉄郎とメーテルが銀河鉄道999に乗って向かったアンドロメダ銀河は、人類が初めて発見した銀河系外の銀河であり、われわれの銀河系の姿を知るためにも大いに参考になっている。日本の天文学者 半田利弘が書いた「ミステリアスな宇宙」は、こうした天文学者が注目する20の天体について解説した本だ。この本を読んで天文学の知識を身につければ、夜空を見上げるときの楽しみも増えるだろう。
われわれの銀河系には太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホールがあるが、銀河系だけでなく、ほとんどの銀河の中心には、巨大ブラックホールがあるようだ。つい最近も北京大学の研究チームが、太陽の120億倍というとんでもない質量を持つ超巨大ブラックホールを発見した。このような巨大ブラックホールがどうやってつくられたかは謎だが、ブラックホールの形成と銀河の形成は密接に関連しているらしい。ブラックホール周辺は激しく活動していて、ブラックホールが物質を飲み込むときに宇宙ジェットを放出することがある。20世紀中頃、何十億光年も離れているのに恒星のように明るく見える謎の天体クエーサーがたくさん発見されたが、その後の研究により、巨大ブラックホールを持つ活動銀河核が見えているのだと考えられるようになった。日本の天文学者 谷口義明らが書いた「巨大ブラックホールと宇宙」は、巨大ブラックホールの謎に迫る本だ。
夏の夜空でひときわ美しく輝く天の川は、われわれの銀河系を内側から見たものだ。銀河系の中心部は天の川の一番濃い部分、いて座の方向にあるが、可視光線では見通すことはできない。その銀河系の中心には、巨大ブラックホールがあると考えられている。ブラックホールは、太陽質量の30倍以上の恒星の超新星爆発によってもつくられるが、銀河系の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*(スター)」はケタ外れの大きさで、太陽の400万倍の質量を持つと考えられている。いて座A*から1光年以内の領域には10万個以上の恒星がひしめいているそうで、ときどきブラックホールに丸ごと飲み込まれる恒星もある。そういうときには高エネルギーのX線を放出するので、X線によって観測することができる。日本の天文学者 祖父江義明らが書いた「天の川の真実」は、銀河系の中心部に存在する巨大ブラックホールにスポットを当て、銀河系の真実の姿に迫る本だ。
冥王星は現在、準惑星に分類されているが、かつては太陽系の第9番惑星だった。しかし、太陽系に未知の惑星が存在すると考える人も多く、水星の内側に「バルカン」という惑星があるとか、冥王星の外側に第10番惑星があるとして、それらを探し出そうという研究も盛んに行われた。20世紀後半になり、観測技術が進歩するにつれ、実際に冥王星に似た小惑星が続々と発見されるようになった。冥王星が惑星から準惑星へと変更されたのも、これが理由だ。現在では、海王星の外側にはエッジワーズ・カイパーベルトという領域があり、そこには多くの小天体(EKBO)があると考えられている。日本の天文学者 渡部潤一らが書いた「太陽系の果てを探る」は、冥王星が準惑星に変更されるちょっと前に書かれた本で、第10番惑星を発見しようと追い求めてきた人々の物語だ。
タイムマシンが物理学者によってまじめに研究されるようになったのは、アメリカの物理学者キップ・ソーンらが、通り抜け可能なワームホールの理論を発表したことが大きい。ソーンらは、宇宙の離れた場所をつなぐワームホールという天体が存在し、つながれた2つの場所は直接的に往来できるということを理論的に証明したのだ。これを利用できれば、タイムトラベルが可能になるというのがタイムマシンの理論的根拠だ。アメリカの物理学者ポール・ハルパーンが書いた「タイムマシン」は、「2001年宇宙の旅」や「コンタクト」、「スター・トレック」など、SF映画などの話もふんだんに取り入れながら、タイムマシンにまつわる話を展開している。
タイムマシンはSFの世界では大人気の機械だ。数々の小説・映画に登場し、主人公を過去から未来あらゆる時代へのタイムトラベルに連れていく。もちろんSFなので、現実にはそんな機械はないのだが、理論的にタイムマシンは実現可能なのかをまじめに研究している学者もいる。イギリスの物理学者ポール・デイヴィスもその1人で、「タイムマシンをつくろう!」という本の中で具体的にどんな装置が必要なのか、起こりうる問題は何なのかを述べている。デイヴィスはワームホールを使ってタイムマシンをつくる方法を述べているが、カール・セーガン原作の映画「コンタクト」でも、ワームホールを使って1時間もかからずに25光年先のベガに到達している。
自然界には原始番号92ウランまでの元素が存在するが、もともと138億年前のビッグバンで生成したのは水素(陽子1個)とヘリウム(陽子2個)ぐらいだった。それが重力で集まり、中心部で核融合を起こして初めて恒星が誕生したのは、ビッグバンから数億年後と考えられている。ひとたび核融合が起きると、水素・ヘリウムより重い元素が生成していくが、特に大質量星では、核融合は非常に速いスピードで進んでいく。そして、地球でおなじみの炭素や窒素、酸素、カルシウムなどがどんどんつくられ、中心には鉄がたまっていく。これが超新星爆発で飛び散り、次世代の星の材料になり、さらには地球上の生命のもとにもなった。アメリカの物理学者ローレンス・クラウスが書いた「コスモス・オデッセイ」は、宇宙の誕生から生命の誕生まで、1個の酸素原子をめぐる壮大な物語だ。
アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論を宇宙に当てはめると、宇宙は静的ではなく、膨張するか収縮するという数学解が得られることがわかった。しかし、アインシュタインは宇宙は静的であると信じていたので、自らの方程式に宇宙項と呼ばれる定数を付け加え、つじつまを合わせようとした。後にエドウィン・ハッブルが宇宙の膨張を発見、アインシュタインは宇宙項の導入を人生最大の過ちとして消去した。ところが、20世紀終わり頃になると、観測の結果宇宙の膨張が加速していることが判明、これを説明するには、ダークエネルギーという正体不明のエネルギーが必要となった。このダークエネルギーは、数学的にはアインシュタインが消去した宇宙項と同等であり、かくしてアインシュタインの宇宙項は復活することになった。アメリカの天文学者ロバート・P・キルシュナーが書いた「狂騒する宇宙」は、ダークマターやダークエネルギーなど、天文学のホットな話題を解説した本だ。
コンピュータの歴史を振り返るとき、必ず登場するのがイギリスの数学者アラン・チューリングだ。チューリングの人生はまさに波瀾万丈で、ドイツの暗号エニグマ解読という輝かしい(しかし決して公にはできない)成果を挙げる一方で、晩年は犯罪者として扱われ、非業の死を遂げた。ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画「イミテーション・ゲーム」は、そのチューリングの生涯を描いた映画だ。世間では、数学者=変わり者というイメージがあるだろうが、実際ぼくの先輩の数学者も学生時代からやはりちょっと変わり者だった(すみません)。しかし、この映画でのチューリングの変人ぶりはレベルが違う。イギリスのドラマ「SHERLOCK」もそうだが、カンバーバッチはこういうエキセントリックな役をやらせると今や当代随一かもしれない。映画では、チューリングは青酸化合物で自殺したということになっているが、事故だという説もあったらしい。死後、チューリングの業績が明らかになるにつれ正当な評価を受けるようになるが、政府による正式な謝罪は2009年、女王の名による恩赦が与えられたのは一昨年だった。
宇宙を構成するもののうち、目に見える普通の物質はわずか5%に過ぎない。なぜそんなことがわかったのかというと、銀河団の中の銀河の動きや銀河の回転速度を観測したところ、目に見える物質の何倍もの質量がないと説明できないような結果が出たからだ。そこで、そのような未知の物質を「ダークマター(暗黒物質)」と名付け、正体を探る研究が続けられてきた。ところが、それだけではなかった。観測機器の進歩により宇宙の膨張が加速していることがわかり、宇宙には正体不明のダークエネルギーが存在することが明らかになってきた。最新の研究では、宇宙を構成するもののうち、ダークマターが27%、ダークエネルギーが68%ということになっている。アメリカの天文学者ダン・フーパーが書いた「見えない宇宙」は、宇宙の大部分を占めるダークマターやダークエネルギーの正体に迫ろうという本だ。
素粒子物理学の理論として、標準模型という理論的枠組みがほぼ確立している。標準模型では、自然界の4つの力のうち、電磁気力、強い力、弱い力の3つの力を説明することができる。この3つの力は、クォークやレプトンと呼ばれる素粒子の間を、光子(電磁気力)やグルーオン(強い力)、Wボゾン・Zボゾン(弱い力)と呼ばれる粒子が媒介することによって伝わると考えられている。標準模型のうち、ヒッグス粒子だけは発見されていなかったが、これもとうとう、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での実験によって発見された。アメリカの物理学者ブルース・シュームが書いた「『標準模型』の宇宙」は、一般向けに標準模型を解説した本だが、ゲージ理論など難しい概念をあまり省略しないで説明しているので、内容的にはなかなか難しい。しかし、群論という純粋数学の抽象概念が物理学と深く結びついているとは、自然は本当に奥深い。
弦理論(ひも理論)は、すべての素粒子と、その間に作用するすべての力を説明する万物の理論かもしれないと言われ、ここ数十年にわたって物理学界で注目されてきた理論だ。しかし、「理論」といっても、まだきちんと確立されてなく、懐疑的な見方をする物理学者もいる。弦理論は1968年に初めて登場したが、しばらくはアノマリー(異常性)と呼ばれる矛盾を解決できず、忘れ去られそうになった。しかし、1984年にアノマリーが含まれない弦理論が発見され、ここから第1次超弦理論革命が始まった。1990年半ばには、弦の双対性(そうついせい)とブレーン(膜)を組み込んだ理論が登場、第2次超弦理論革命が起こった。最新の理論では、われわれが住む宇宙は11次元時空で、見えない次元は小さく巻き上げられているということだが、まだまだわからないことだらけで、果たして弦理論が万物の理論かどうか、これからも紆余曲折があるだろう。アメリカの物理学者スティーブン・ガブサーが書いた「聞かせて、弦理論」は、弦理論をわかりやすく解説した本だ。
自然界には重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つの力がある。重力は万有引力とも言われ、距離が長くなるにつれ弱くなっていく。電磁気力はプラスとプラス、マイナスとマイナスなら反発し、プラスとマイナスなら引き合うが、これも距離が長くなるにつれ弱くなっていく。強い力は、クォークとグルーオンと呼ばれる素粒子を結びつけ、陽子や中性子などをつくる力だが、距離が短くなるにつれ小さくなる(距離が長くなるにつれ大きくなる)という性質=漸近的(ぜんきんてき)自由を持っている。この強い力の漸近的自由を発見したアメリカの物理学者フランク・ウィルチェックが書いた「物質のすべては光」は、現代物理学の最先端をわかりやすく解説した本だ。ウィルチェックは質量の起源とは何か?という問題を根底に置き、普通の物質の質量の95%は、それ自体は質量をほとんど、あるいはまったく持たない、クォークとグルーオンの活動から生まれているという。宇宙を構成するもののうち95%は正体不明のダークマターやダークエネルギーが占めているという観測結果もあり、まだまだ解明すべき謎は多い。
アメリカの物理学者ウォルター・ルーウィンのマサチューセッツ工科大学(MIT)での物理学の講義は、体を張ったパフォーマンスで学生に人気だという。エネルギー保存の法則の授業では、15㎏の鉄球を振り子につけ、あごを砕く寸前でちゃんと止まるところを実演するそうだ。そんな授業をする一方、ルーウィンの専門はX線天文学で、「これが物理学だ!」では、物理学の基本的な法則の話とともに、X線天文学の歴史も述べられている。19世紀後半、ジェームズ・クラーク・マクスウェルが電磁気の法則を統一したが、マクスウェルの4つの美しい方程式は、何もない空間を伝わる電磁波の存在を予言した。そして1930年代、カール・ジャンスキーが天の川から電波がやってくることを発見、そこから電波天文学という新しい分野が生まれることになった。ルーィン教授の「感動」講義は、インターネットでも見ることができる。
イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスの本は、どれも分厚い。有名な「利己的な遺伝子」なんか500ページもある大作なので、買ってはあるが実はいまだに読んでない。そんな中で、「遺伝子の川」は230ページくらいと手頃であり、しかも内容的にも他の本より一般向けになっているので、ドーキンスを初めて知るにはいいかもしれない。ドーキンスはよく、「利己的な遺伝子」というような比喩を使うが、「遺伝子の川」とは、地質学的な時間を流れながら分岐していくDNAの川のことを言っている。一つの種が二つに分かれると、新しい種が生まれる。地球上にはいま、3000万にのぼるDNAの川があるが、かつて地球上に存在した川の流れは30億にもなると考えられている。その中から、自分自身のことについて考える知的生命体が誕生したのは、やはり驚くべきことだと思う。