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夜空をながめていると、ほぼ毎回流れ星を見る。たいていの流れ星は数㎜程度の大きさの塵が大気に飛び込んで発光したものだが、昨年2月にロシア・チェリャビンスク州に落下したものは直径17mの小天体だった。ロシアでは1908年にも直径70m程度の小天体が衝突したツングースカ大爆発という事件があった。約6,500万年前に恐竜を含む生物の大量絶滅を引き起こしたのも小惑星の衝突が原因で、これは直径10㎞ほどの大きさだったろうと考えられている。最近、直径300m程度の小惑星アポフィスが2029年に地球に衝突するかもという話があったが、今のところはだいじょうぶだろうと言われている。1998年の映画「ディープ・インパクト」は、彗星が地球に衝突するという、実はいつ起きてもおかしくないできごとを描いたSF映画だ。「ディープ・インパクト」では、核兵器で彗星本体を破壊することに成功するが、いずれにしても地球に衝突する可能性のある小天体を常時監視する必要がある。日本スペースガード協会は、国際スペースガード財団との連携のもとで、そのような活動を続けている。
夏から秋の天の川を、パノラマ写真風に合成してみた。普通のパノラマ写真の作り方は簡単で、アプリケーションまかせでできてしまう。天体写真の場合は、かつてはアプリケーションまかせではなかなかうまくいかなかったが、最近はアプリケーションの性能が上がり、うまく合成してくれるようになった。この写真はAdobe Photoshop ElementsのPhotomerge Panoramaという機能を使い、4枚の写真を合成して作成した。われわれの銀河系は、棒渦巻銀河と呼ばれる構造だと考えられていて、太陽系はいて座の方向にある中心部から約3万光年離れている。銀河系にはたて・りゅうこつ腕とペルセウス腕という2つの大きな渦状腕があるほか、太陽系を含むオリオン腕などの小さな渦状腕が何本かある。したがって地球から見える天の川は、1本の腕を見ているのではなく、何本かの腕を1本の腕のように見ていることになる。銀河系を真上から見た想像図を見ながら、このあたりはどの腕だろうと考えるのも楽しい。
2013年9月5日・2014年8月30日撮影 キャノンEOS60Da+シグマ対角線魚眼レンズ15㎜、露出180秒
こぐま座のα星は天の北極に近いため、北極星と呼ばれている。ただし、地球の自転軸は、歳差運動といって約2万5,000年周期でコマの首振り運動のように回転しているため、いずれは今の北極星も天の北極から離れていく。北極星はその場所の緯度と同じ高さに見えるため、ぼくの町からは42°21′の高さに見える。北極星は天体写真撮影にはとても重要で、撮影前には必ず北極星を使って赤道儀の極軸合わせをする。なので、雲がかかるなどして北極星が見えなければ、ほかの方向がいくら晴れていても、撮影を始めることはできない。こんなに重要な星だけど、北極星の周辺には星雲星団銀河がないので、あわれ北極星周辺を撮影することはほとんどない。
2014年8月30日撮影 キャノンEOS60Da+シグマ対角線魚眼レンズ15㎜、露出180秒
北海道にはかつて多くの炭鉱があった。中でも石狩炭田は日本最大の炭田で、夕張や芦別、赤平、歌志内などの産炭地は大いににぎわった。釧路炭田にも、以前は太平洋炭礦という会社があったが、今は釧路コールマインという会社が事業を続けている。石炭は植物が枯れて積み重なり、地中の熱や圧力を受けてできたもので、いわば植物の化石だ。石狩炭田は内陸にあるが、ここ釧路では海底に坑道を掘って採炭している。昔はうちの方でも「太平洋の海底炭」という看板を見かけたものだ。坑道の入口は釧路市中心部から春採(はるとり)湖の向こう側にあるが、近くにはちょっと変わった山がある。石炭とともに出てくる岩石の捨て場で、ズリ山(ボタ山)と呼ばれている。
釧路湿原は、今から6,000年くらい前は浅い湾だったそうだ。6,000年前というと日本では縄文時代だが、当時は最終氷期が終わって気候が温暖化、氷河が融けて海水面が上昇していた(縄文海進)。その後海水面が低下し、土砂や泥炭が堆積、3,000年くらい前に今のような姿となったという。周辺にある塘路(とうろ)湖やシラルトロ湖、達古武(たっこぶ)沼は、釧路湿原が海だった名残だ。釧路湿原は広いので、東側、西側のいずれにも展望台があるが、一番雰囲気がいいのが東側にある細岡展望台だろう。摩周国道391号線からJR細岡駅経由で向かえば、舗装道路なのでオンロードバイクでもOKだ。細岡展望台の下には釧路湿原駅もあるので、汽車でも行ける。細岡展望台からは湿原に沈む夕日も狙える。ぼくも昔、銀塩カメラ時代に撮影したことがあり、どこかにネガがあるはずだ。
旧暦8月15日(十五夜)の中秋の名月は、今年は9月8日の月に相当するが、本当の満月は今日、9月9日だ。月の軌道は楕円だがちょっと複雑な動きをするため、新月から満月までの時間や地球との距離は一定ではない。地球からの距離は、一番近いところと一番遠いところで1割くらい違う。今年の中秋の名月は地球に近いスーパームーンだ。比較のため昨年の中秋の名月と並べてみた。左が昨年、右が今日の月だが、今日の方がちょっと大きい。色は補正していない(Adobe Photoshop Elements で比較明合成)。
左:2013年9月19日撮影 キャノンEOS60Da+ミニボーグ45EDⅡ、露出1/2000秒
右:2014年9月9日撮影 キャノンEOS60Da+ミニボーグ45EDⅡ、露出1/2000秒
国後島は北方四島の中では択捉島に次いで大きい。知床半島と根室半島の間にある根室海峡の中に入り込んでいて、北海道からもよく見える。知床半島の南側は羅臼町の相泊温泉まで道があるが、ここに行く途中ずっと国後島が見えている。ただ、国後島の北側は、集落らしきものは見えない。国後、択捉など千島列島は火山列島だ。日本の火山の分布図を見るとわかるが、東日本の火山帯は日本海溝に、西日本の火山帯は南海トラフに平行になっている。これは、プレートどうしが衝突し、一方のプレートがもう一方のプレートの下にもぐり込み、ある程度の深さまで達して高温高圧になったところでマグマができるからだ。このマグマが地上に上昇して火山ができる。国後島には4つ、択捉島には7つの活火山がある。
さんかく座の渦巻銀河M33は局部銀河群に属するビッグ3の1つだが、大きさは銀河系の半分くらいだと考えられている。アンドロメダ銀河は肉眼でもはっきりわかるほど明るいが、M33は約6等級と暗く、よほど条件がよくないと肉眼では見えないだろう。双眼鏡や望遠鏡なら存在はわかるが、眼視では渦巻構造まではよくわからない。しかし、写真写りはわりとよく、渦巻の形もよくわかる。ぼくなんかはこれを見ると、「おそ松くん」のイヤミがやる「シェー」を思い出してしまう。宇宙の大規模構造として銀河群、銀河団、さらには超銀河団というのがあるが、局部銀河群は、おとめ座銀河団とともにおとめ座超銀河団に属している。このような大規模構造の「種」となったのが宇宙誕生まもない頃の量子ゆらぎだった。 なお、最新の研究では、おとめ座超銀河団もさらに大きな超銀河団「ラニアケア(ハワイ語で「無限の天空」の意)」に属しているらしい。
2014年8月28日撮影 キャノンEOS60Da+ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG、露出301秒
アンドロメダ銀河M31はわれわれの銀河系の隣人だ。いずれも局部銀河群に属しているが、局部銀河群には50程度の銀河が確認されていて、その中でこの2つは飛び抜けて大きい。従来から、M31は銀河系よりちょっと大きいと考えられていたが、最新の研究では、M31の質量は銀河系の2倍くらいらしい。M31も銀河系もたくさんの伴銀河を伴っていて、この写真にもM32とM110が写っている。銀河系の伴銀河のうち地球からよく見えるのが大小マゼラン銀河だ。ただし、残念ながら南半球からしか見えない。M31は写真写りも抜群によく、口径60㎜の望遠鏡でもこんなによく写る。
2014年8月28日撮影 キャノンEOS60Da+ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG、露出301秒
みずがめ座の惑星状星雲NGC7293は、その形から「らせん星雲」と呼ばれている。惑星状星雲としては、こと座の環状星雲M57やこぎつね座のあれい状星雲M27が有名だが、らせん星雲はずっと大きい。ずっと大きいが、非常に淡いので、眼視ではなかなか見るのは難しいかもしれない。写真に撮るとけっこうカラフルだ。惑星状星雲は、太陽程度の質量の恒星が最後にガスを放出したもので、われわれの太陽もいずれはこのような姿になると考えられている。はるかな未来、どこかの星の住人がそれを見て、目玉焼き星雲とでも名付けるかもしれない。
2014年8月28日撮影 キャノンEOS60Da+ミニボーグ60ED+レデューサー0.85×DG、露出180秒