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2014年7月

2014年7月31日 (木)

多世界宇宙の探検

 旧ソ連生まれのアレックス・ビレンケンは、宇宙は無から生じたという仮説を最初に唱えた物理学者だ。ここでいう「無」とは、単に物質が存在しないというだけでなく、空間も時間もない状態だ。一方で、量子力学の不確定性原理によると、すべての物理量が確定的にゼロである「無」というのはなく、常に無と有の間をゆらいでいる。そこからトンネル効果というもので宇宙が生まれ、インフレーションを経てビッグバンが起きたというのが最新宇宙論のシナリオだ。ビレンケンはさらに、本書「多世界宇宙の探検」の中で、多世界宇宙(マルチバース)についても述べている。宇宙は無限に生まれ続けていて、その中にはわれわれの世界とまったく同じ世界もあるだろうというのだ。何ともびっくり仰天の話だ。

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2014年7月30日 (水)

セミの抜け殻

 今年もセミの大合唱が始まった。ご存じのように、セミはその生涯の大部分を幼虫として地下で暮らし、成虫として地上で生きる期間はごく短い。セミが大合唱するこの時期は、あちこちでセミの抜け殻を見つけることができる。

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2014年7月29日 (火)

つぐ高原グリーンパーク②

 つぐ高原グリーンパークの夏の夜は意外とすっきり晴れない。だいたいいつも雲がかかってしまう。しかし、今回は雲がかからない時間がけっこうあり、天の川や流れ星を楽しむことができた。流れ星は5〜6個は見ただろうか。流れ星!と思ったら、ホタルだった、というのもあった。ホタルを見たのは久しぶりだ。この写真の森のすぐ上にはいて座が見えた。われわれの銀河系の中心はいて座の方向にあるので、天の川の一番濃いところだ。ニコン モナーク8×36㎜双眼鏡を持って行ったので、干潟星雲やアンドロメダ銀河、二重星団なども見ることができた。このクラスの双眼鏡ならそんなに重くないので、旅先に持参するといい。

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2014年7月28日 (月)

つぐ高原グリーンパーク①

 2年ぶりにつぐ高原グリーンパークにやってきた。昼は日差しが強く猛暑だが、夜はけっこう涼しい。これくらいならクーラーなしでもそんなに寝苦しくない。ちょっとしたイベントに参加したのだが、夕食後には芸大出身の女性カルテット「Flying Doctor」による演奏会もあった。鍵盤ハーモニカをはじめヴァイオリンやギター、ウクレレなどいろんな楽器が登場したが、初めて見る楽器もたくさんあった。というか、恥ずかしながら鍵盤ハーモニカという楽器があるのも初めて知った。これがちゃんとソプラノ、アルト、バスまであるので、4人で演奏するとなかなか豊かな表現力がある。楽しい演奏会だった。

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2014年7月27日 (日)

2100年の科学ライフ

 日系アメリカ人の物理学者ミチオ・カクは超弦理論(超ひも理論)の専門家だが、科学番組の司会をやるなど、広く一般に科学を普及させる活動に取り組んでいる。その中で、科学のさまざまな分野で活躍する世界でもトップクラスの人物300人以上にインタビューする機会に恵まれたことから、21世紀の科学がどのように発展していくのかを予想した本「2100年の科学ライフ」を書いた。この本では、コンピューターの未来、人工知能の未来、医療の未来、ナノテクノロジー、エネルギーの未来などの分野について、それぞれ近未来(〜2030年)、世紀の半ば(2030〜2070年)、遠い未来(2070〜2100年)にわけて、どのような技術が実現されるかを予想している。とりわけエネルギー問題については、カクが述べるように今世紀中には核融合発電を商用化できるのではないかと、ぼくも楽観的に考えている。

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2014年7月26日 (土)

宇宙が始まる前には何があったのか?

 アメリカの物理学者ローレンス・クラウスが書いた「宇宙が始まる前には何があったのか?」の原題は「A UNIVERSE FROM NOTHING」、すなわち「無から生じた宇宙」だ。トンデモ話のようだが、宇宙は無から生じた、というのが現代宇宙論なのだ。正確に言うと、宇宙の始まりは「無」だが、そこには「ゆらぎ」(無と有の間をゆらいでいる状態)があって、そこからトンネル効果で宇宙が生まれ、インフレーションと呼ばれる急膨張を経てビッグバンが起きた、というシナリオだ。クラウスは1990年代半ば、宇宙の全エネルギーの68%を占めるダークエネルギーの発見に重要な貢献をしたが、これが意味するのは、宇宙の膨張が加速し、いずれはわれわれの銀河系の外の宇宙は見えなくなるということだ。われわれは、観測できる希有な時代に生きているのだ。とは言っても、そうなるのは2兆年後なので、天体写真の趣味は当分やめなくてもだいじょうぶだ。

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2014年7月25日 (金)

NIAGARA TRIANGLE VOL.2

 大瀧詠一・佐野元春・杉真理による「NIAGARA TRIANGLE VOL.2」は学生時代から今に至るまでよく聴いているアルバムだ。このちょっと前には大瀧詠一の「A LONG VACATION」が出ていて、大瀧詠一ぜっこーちょー、という時期だった。「A面で恋をして」から始まって名曲のオンパレードだが、ぼくのお気に入りは杉真理の「夢みる渚」と大瀧詠一の「オリーブの午后」。もう発売から30年も経つが、まさに「Oldies but Goodies」だ(そんなに古くないけど)。

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2014年7月24日 (木)

ブラックホール戦争

 「ブラックホール戦争」、などというとSF小説のタイトルのようだが、アメリカの物理学者レオナルド・サスキンドが書いたこの本は、サスキンドとスティーヴン・ホーキングが繰り広げた、ブラックホールに落ち込んだ粒子の情報が失われるかどうかをめぐる論争をユーモアたっぷりに語った本だ。ブラックホールは一般相対性理論の方程式から導かれる驚くべき解だが、アインシュタインでさえ、それは単なる数学的な解であって現実には存在しないと考えていた。サスキンドとホーキングの論争が注目されたのは、これが一般相対性理論と量子力学の調和という現代物理学最大の問題に結びついていたからだ。この論争は結局、サスキンドが勝利し、ホログラフィック原理などの新しいアイディアも生まれたが、一般相対性理論と量子力学の調和という大きな問題は依然として残されたままだ。

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2014年7月23日 (水)

Surfin’ U.S.A.

 いよいよ真夏がやってきた。夏の音楽といえば、ボサノヴァとザ・ビーチ・ボーイズだろう。「Surfin’ Safari」「Surfin’ U.S.A.」「Surfer Girl」に代表されるように、サーフィン&ホットロッド・サウンド満載で、大瀧詠一や山下達郎など日本のミュージシャンにも多大な影響を与えた。中でもぼくのお気に入りは「California Girls」。この曲、007「美しき獲物たち」でもBGMとして使われている。ボンドがシベリアでソ連軍に追われ、スノーサーフィンで逃げるシーンだ。

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2014年7月22日 (火)

隠れていた宇宙

 現代物理学の最先端はSF化しつつある。アメリカの物理学者ブライアン・グリーンの最新刊「隠れていた宇宙」の監修者であるサイエンスライターの竹内薫はこう述べている。この本は、最先端の宇宙論の中でも最も驚くべき仮説、マルチバース(並行宇宙、多宇宙)について解説したものだ。「マルチバース」とは、宇宙を意味する「ユニバース」からつくられた造語で、われわれの宇宙から見えないところに別の宇宙がたくさんあるという話だ。もちろん、単なる空想ではなく、量子力学、超弦理論(超ひも理論)、ランドスケープ宇宙、ホログラフィック理論など、名だたる物理学者たちが追究してきた最先端の理論が、なぜかみなマルチバースの存在を予言するのだ。ただし、実際に検証可能かどうかということを考えると、少なくとも今現在はほとんど不可能だろう。しかし、このような奇妙キテレツな研究が、名だたる物理学者たちによって大マジメになされているのだ。

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2014年7月21日 (月)

宇宙を織りなすもの

 アメリカの物理学者ブライアン・グリーンは超弦理論(超ひも理論)の専門家であり、一般向けの解説書「エレガントな宇宙」は、同名のテレビ番組への出演もあってベストセラーになった。そのグリーンが書いた「宇宙を織りなすもの」は、「空間とは何か、時間とは何か」という究極の問題について、一般向けに解説した本だ。空間と時間は、当たり前のように存在している。20世紀になるまで、ほとんどの人間がそのように考えていた。その「常識」が揺らぎ始めたのは、アインシュタインが相対性理論を発見したときからだ。相対性理論は、空間と時間が互いに複雑に絡み合いながら、伸びたり縮んだり曲がったりすることを予言した。本書の締めくくりでグリーンは、空間と時間は宇宙の基本構成要素ではなく、この3次元の宇宙の中で起きているように見える出来事は、遠くの2次元の表面で起きている出来事を投影するホログラムのようなものかもしれないと述べている。これがホログラフィック原理と呼ばれるものだが、最先端の宇宙論はまったくすごいことになっている。

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2014年7月20日 (日)

タウシュベツ橋梁②

 十勝の糠平湖(ぬかびらこ)にある旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ橋梁(きょうりょう)」に行くには、糠平三股林道というダートを走ることになる。かつては自由に行けたのだが、2009年からはゲートが設置され、森林管理署で鍵を借りなければならなくなったそうだ。熊出没地帯でもあり、気をつけなければならないが、一度はここで星景写真を撮影してみたいものだ。

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2014年7月19日 (土)

タウシュベツ橋梁①

 十勝の糠平湖(ぬかびらこ)にある旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋「タウシュベツ橋梁(きょうりょう)」が崩壊の危機を迎えているそうだ。糠平湖は毎年6月頃から水位が増し、タウシュベツ橋梁も水没してしまうが、水や氷の侵食作用によって破壊が進んでいるのだ。この写真は2008年に撮影したものだが、現在はさらに老朽化しているようだ。

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2014年7月18日 (金)

自然景観の謎

 グランドキャニオンの深い峡谷は、コロラド川がつくった。土壌や岩石は風、水、氷の流れによって砕かれ、削り取られるが、グランドキャニオンは4000万年という時間をかけてコロラド川が大地を侵食したものだ。「自然景観の謎」は、世界のさまざまな自然景観(ランドスケープ)がどのようにして現在の形になったかを、わかりやすいイラストで解説した本だ。これを読んで基礎知識を身につけ、いろいろな地形の成り立ちを推理するのも楽しそうだ。

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2014年7月17日 (木)

日本の地形・地質

 日本列島には美しい自然景観がたくさんある。「日本の地形・地質」は、日本全国から特色ある地形・地質116カ所を選んで紹介するガイドブックだ。北海道からは知床半島など7カ所が紹介されているが、このうち2カ所、幌満かんらん岩体と新冠泥火山が日高地方だ。幌満かんらん岩体のある様似町一帯はアポイ岳ジオパークとなっていて、標高800mちょっとのアポイ岳には珍しい高山植物がたくさんある。新冠泥火山は国道235号線沿いにあって、周辺は牧場が多く、サラブレッド銀座とも呼ばれている。旅の醍醐味は美しい景色にうまい料理と酒だが、地質学もそれに加えると楽しい。

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2014年7月16日 (水)

地球全史

 46億円前に誕生した地球は、今なお活発な活動を続けている。インド亜大陸とユーラシア大陸が衝突してできたヒマラヤ山脈は今も隆起しているし、4つのプレートがひしめきあうという世界的にも珍しい場所にある日本列島では、しばしば大地震や火山の噴火が発生している。こうした活動の結果、地下に潜り込んでいた地層や化石が地表に押し上げられ、見事な姿を見せることがある。また、小惑星が衝突して環境が激変し、恐竜を含む生物が大量絶滅するなど、天体衝突の痕跡も残っている。地質写真家の白尾元理と地質学者の清川昌一が書いた「地球全史」は、こうした世界各地のすばらしい地層の写真集だ。国内にも特色ある地形があちこちに点在しているので、それも旅の楽しみに加えるといい。

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2014年7月15日 (火)

祖先の物語 ドーキンスの生命史

 イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスは、「利己的な遺伝子」という著書で広く一般にも名を知られた人だ。そのドーキンスが書いた「祖先の物語 ドーキンスの生命史」は、40億年にわたる生命史を現在から過去へと逆向きにたどる、ドーキンスいわく「カンタベリー物語」にならった「巡礼」だ。「巡礼者」たちは、1章ごとに共通の祖先(コンセスター)に合流(ランデヴー)し、さらなる巡礼を続ける。例えば、ランデヴー1でわれわれ人類は、700万年前から500万年前の間の、アフリカのどこかで、チンパンジーと合流する。その後39回のランデヴーを果たすと、現存するすべての生物の始祖であるコンセスターへと到達する。上下2巻で900ページを超える大作だが、圧倒的なおもしろさだ。

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2014年7月14日 (月)

デジタルカメラによる 星座写真の写し方

 一口に「天体写真」といっても、標準〜広角レンズを使っての星野・星景写真、望遠鏡を使っての星雲星団銀河写真、月・惑星・太陽写真など、いろいろなジャンルがある。このうち機材の面で最もお手軽なのは星野・星景写真だが、光害のない田舎まで行かなければいい写真は撮れない。月・惑星・太陽写真は都会でも撮影できるが、機材はちょっと大がかりなものになる。天体写真家 沼澤茂美の書いた「デジタルカメラによる 星座写真の写し方」は、星野・星景写真の撮影方法を解説した本だ。デジタルカメラの進化に伴い、フィルム時代より露出時間が少なくてもよく写るようになったので、特に星景写真の人気が高まったようだ。

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2014年7月13日 (日)

デジタル天体写真のための 天体望遠鏡ガイド

 ぼくが天体望遠鏡を初めて手にしたときは、アクロマートレンズの屈折式望遠鏡かニュートン式の反射式望遠鏡くらいしかなかったが、その後新たな光学系がどんどん開発され、当時とは比べものにならないほど高性能な望遠鏡が販売されるようになった。最近では、デジタルカメラの進化もあって、昔なら天文台でしか撮影できなかったようなすばらしい写真が、アマチュアでも撮影できるようになっている。こうなると、永遠の天文少年としては、個人天文台をつくるという長年の夢をかなえるしかない。とまあぼくと同じような願望を持っている人は、この「デジタル天体写真のための 天体望遠鏡ガイド」を読んでみるといいだろう。実際に市販されている望遠鏡の性能がよくわかるので、望遠鏡選びの参考になる。

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2014年7月12日 (土)

世界星座早見

 かつて、夜空を見るときは星座早見盤が必携だったが、今は「iStellar」など便利なモバイルアプリがあり、非常に便利になった。何しろスマホやタブレットを空にかざせば、その方向に見える星座や天体が表示されるのだ。まあしかし、星座早見盤もいまだ健在だ。三省堂「世界星座早見」は片面が北半球、片面が南半球用で、詳細な解説書もついている。姉妹版で「月の動きがよくわかる 光る星座早見」というのもあり、こちらは月齢がわかるようになっている。天体写真撮影には月齢が大きく影響するので、これも便利だ。もっとも、月齢や日の出・日の入り時刻がすぐわかる「月時計」というスマホ用アプリがあるので、ぼくはこっちを使っているが。

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2014年7月11日 (金)

オリオン星雲

 オリオン座は全天の中でも非常に興味深い星座だ。ベテルギウスとリゲルという2つの1等星があり、オリオン座大星雲という星が生まれるところもある。眼視でも写真でも美しく、学術的にも非常に貴重な存在だ。ハッブル宇宙望遠鏡計画を主導したアメリカの天文学者C・ロバート・オデールが書き、宇宙飛行士の土井隆雄・ひとみ夫妻が監修・翻訳した「オリオン星雲」は、オリオン座に魅せられた人たちの物語だ。ベテルギウスは極めて大きな恒星であり、不安定な状態になっていることから、いずれ超新星爆発を起こすと考えられている。もし超新星爆発を起こせば、満月並みの明るさになるとも言われている。しかし、それがいつになるかはまったくわからない。天文学的な時間のスケールは、人間的な時間のスケールとは違いすぎるのだ。

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2014年7月10日 (木)

宇宙を見る新しい目

 1600年頃、ヨーロッパで望遠鏡が発明され、まもなく天体観測に使われるようになった。これは可視光線を観測するもので、光学望遠鏡と呼ばれている。19世紀中頃になって、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは電磁気学のマクスウェルの法則を完成、これによって電磁波というものが存在することと、可視光線は電磁波の一種であることも判明した。20世紀中頃には電波望遠鏡が登場、観測対象が大きく拡大し、天文学にめざましい発展をもたらした。日本物理学会編「宇宙を見る新しい目」は、可視光線や電波といった従来の「目」に加え、X線やガンマ線、重力波、ニュートリノなどの「新しい目」による観測成果をまとめた本だ。このうち重力波の分野については、スーパーカミオカンデのある奥飛騨で、重力波望遠鏡「KAGRA」が建設中だ。

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2014年7月 9日 (水)

素粒子論のランドスケープ

 カリフォルニア工科大学(カルテク)といえば、かのリチャード・ファインマンが教鞭を執った名門大学だ。そのカルテクでフレッド・カブリ冠教授を務める大栗博司は、いま最も注目されている日本の若手物理学者の一人だろう。カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の主任研究員も兼務しているので、日本とアメリカを行ったり来たりして忙しいだろうが、一般向けの解説書も精力的に書いている。この「素粒子論のランドスケープ」は、いろいろなところで書いた記事を1冊にまとめたものだが、アメリカの女性物理学者リサ・ランドールとの対談も収録されている。

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2014年7月 8日 (火)

宇宙は何でできているのか

 

 カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)は、宇宙への根源的な疑問に答えるために設立された国際的研究機関で、千葉県柏市にある。カブリ財団から多額の寄付を受けたので、このような名称になった。機構長の村山斉はぼくと同世代だが、最近は一般向けにわかりやすい解説書をたくさん書いている。この「宇宙は何でできているのか」はベストセラーになり、新書大賞も受賞した。

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2014年7月 7日 (月)

宇宙の地図

 われわれが夜空を見上げるとき、そこに見るのは、さまざまな天体が天球に投影された姿だ。天体までの距離はまちまちなので、同じ方向に見えるからといって実際に近い位置にあるとは限らない。しかも、宇宙で距離を測るのは非常に難しく、宇宙の3次元マップを作るのはなかなか大変だった。国立天文台の台長も務めた観山正見(みやましょうけん)と小久保英一郎が書いた「宇宙の地図」は、ちょっと趣向を凝らした宇宙の写真集だ。ページをめくるたびに地球からの距離が10倍になり、新たな天体が登場する。遠い天体を見ることは過去の姿を見るということなので、ページをめくるたびに過去にさかのぼっていくことになる。宇宙の地図作りは、空間の旅であるとともに、時間の旅でもある。

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2014年7月 6日 (日)

戸塚教授の「科学入門」

 日本の物理学者 戸塚洋二は、ノーベル物理学賞の有力候補とも言われていたが、残念ながら2008年、がんのため66歳で死去した。1987年、小柴昌俊が大マゼラン銀河で起きた超新星からのニュートリノを「カミオカンデ」でキャッチしたが、小柴の愛弟子である戸塚は、「カミオカンデ」の後継機「スーパーカミオカンデ」による観測で、ニュートリノが質量を持つことを示した。「戸塚教授の『科学入門』」は、戸塚がブログに書いたものをまとめた本で、相対性理論や量子力学の話に加え、植物の話も書いている。スーパーカミオカンデのある奥飛騨で植物を見ているうちに、興味を持ったのだという。

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2014年7月 5日 (土)

七夕

 7月7日はご存じ七夕だ。しかし、もともとは旧暦(太陰太陽暦)の7月7日であったものを、新暦(太陽暦)移行後もそのまま7月7日にしてしまったため、季節がちょっとずれてしまった。そこで国立天文台では、昔の太陰太陽暦による7月7日に近い日を「伝統的七夕」と呼んでいる。今年の伝統的七夕は8月2日だ。伝統的七夕の晩はいつも月齢6になるので、ほぼ上弦の月が南西の空に傾き、頭上には天の川が地球を取り囲むように見える。その天の川をはさんで織姫星(ベガ)と彦星(アルタイル)が輝いている。この写真にも夏の大三角とともに写っている。
2013年9月5日撮影 キャノンEOS60Da+シグマ対角線魚眼レンズ15㎜、露出180秒

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2014年7月 4日 (金)

彗星、地球へ大接近! & へール・ボップ彗星がやってくる

 日本の天文学者 渡部潤一は、太陽系が専門であり、大彗星が出現するたびにテレビに出演して解説しているので、見たことがある人は多いだろう。1996年〜1997年というのは彗星の当たり年で、1996年3月には百武彗星が地球に大接近して長大な尾を伸ばし、1997年3月には史上最大級の大彗星であるへール・ボップ彗星がシリウス並みの明るさに見えた。こういうときは天文書の出版社や望遠鏡メーカーも大いに活気づき、ガイドブックも続々刊行される。「彗星、地球へ大接近!」も「へール・ボップ彗星がやってくる」も渡部が書いた本だが、百武彗星の方はまさに彗星のように出現したので、わずか10日間で書き上げたという。渡部は昨年も「大彗星、現れる。」「巨大彗星 アイソン彗星がやってくる」という本を書いたが、残念ながらアイソン彗星は太陽最接近の際に消滅してしまった。

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2014年7月 3日 (木)

宇宙はどこまで広がっているか

 宇宙はどこまで広がっているか、宇宙の広がりは有限なのか無限なのかという問題について、オルバースのパラドックスという有名な話がある。これは19世紀前半、ドイツの天文学者ハインリヒ・オルバースが提唱したもので、宇宙が一様で無限の広がりを持つなら、夜空は昼のように明るいはずだというものだ。すなわち、あらゆる方向について、その視線の先には必ず星があるはずだから、夜空は明るく輝いているはずだという話だ。もちろん、現実には夜空は暗いので、オルバースのパラドックスは前提条件のどこかに誤りがある。その後の宇宙論の発展に伴い、宇宙の広がりは有限であり、空を覆い尽くすほど星が存在していないことがわかった。日本の天文学者 堀源一郎が書いた「宇宙はどこまで広がっているか」は、一般市民向けの講演をもとにした本だ。

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2014年7月 2日 (水)

現代天文学入門

 元国立天文台台長の小平桂一は、すばる望遠鏡をはじめとする国立天文台ハワイ観測所建設に大きく貢献した天文学者だ。国有財産である天文台を海外で建設するということで、多くの難題が発生したが、それらを乗り越えての完成だった。その小平が書いた「現代天文学入門」は、1985年時点の知見を元にしているが、観測技術の進歩により、天文学はその頃から劇的な発展を遂げていく。佐藤勝彦とアラン・グースがインフレーション理論を提唱したのが1981年、小柴昌俊がカミオカンデで超新星ニュートリノを捕らえたのが1987年、人工衛星COBEが宇宙の大規模構造の種を発見したのが1991年だ。ちなみに、小平のお嬢さんはNHKでスポーツキャスターを務めた小平桂子アネットさんだ。

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2014年7月 1日 (火)

ビッグバンの発見

 現代宇宙論は、20世紀はじめのアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論に端を発する。一般相対性理論のアインシュタイン方程式をこの宇宙に適用すれば、宇宙は膨張しているという解が得られるが、当時は誰一人としてそのようなことは考えていなかった。宇宙は過去も現在も未来も不変だと考える(定常宇宙論)のが普通だったのだ。しかし、エドウィン・ハッブルによって宇宙の膨張が発見されて以来、定常宇宙論は旗色が悪くなり、宇宙はビッグバンとともに始まったというビッグバン宇宙論が優勢となった。「ビッグバンの発見」を書いた日本の物理学者 佐藤文隆は、相対性理論や宇宙論が専門で、一般読者向けにも数多くの本を書いている。

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